ひだまりソケットは壊れない

ソフトウェア開発に関する話を書きます。 最近は主に Android アプリ、Windows アプリ (UWP アプリ)、Java 関係です。

まじめなことを書くつもりでやっています。 適当なことは 「一角獣は夜に啼く」 に書いています。

JerseyTest で Servlet のリソースを扱う JAX-RS 部品のユニットテストを行う方法

要約

前提知識 : ServletJAX-RS

Jakarta EE (旧 Java EE) における HTTP サーバーアプリケーションのための API として有名なもの *1ServletJAX-RS がある。 これらは依存関係にはなく、Servlet 単体でも JAX-RS 単体でも使用できる。

一方で、JAX-RSServlet コンテナ内で実行し、JAX-RS コンポーネントServletコンポーネントをインジェクトするというような使い方もできる。

In a product that also supports the Servlet specification, implementations MUST support JAX-RS applications that are packaged as a Web application. See Section 2.3.2 for more information Web application packaging.

JAX-RS: Java™ API for RESTful Web Services version 2.1 (11. Environments - 11.2.1 Servlets)

The @Context annotation can be used to indicate a dependency on a Servlet-defined resource. A Servlet-based implementation MUST support injection of the following Servlet-defined types: ServletConfig, ServletContext, HttpServletRequest and HttpServletResponse.

JAX-RS: Java™ API for RESTful Web Services version 2.1 (11. Environment - 11.1 Servlet Container)

Servlet のリソースを扱う JAX-RS コンポーネントユニットテストする方法 (JerseyTest を使用)

JAX-RS コンポーネントユニットテストする方法は様々あるだろうが、個人的には JAX-RS の参照実装である Jersey のテストフレームワークを使う方法に親しみがある。

Jersey のテストフレームワークJerseyTest というクラスを提供しており、これを継承してテストクラスを作ると簡単に JAX-RS コンポーネントのテストを記述できる。

public class SimpleTest extends JerseyTest {
    // SimpleResource という JAX-RS リソースをテストしたい場合は、
    // それを ResourceConfig に渡してテスト用の Application を作ればよい。
    @Override
    protected Application configure() {
        return new ResourceConfig(SimpleResource.class);
    }

    // テストメソッド 
    @Test
    public void test() {
        final String responseContent = target("simple").request().get(String.class);
        assertEquals("Hello World!", responseContent);
    }
}

問題 : 単に JerseyTest を継承してテストクラスを定義するだけだと Servlet リソースが扱われない

上のようなテストコードを書いた場合、基本的には問題なくテストが動く。 しかし、SimpleResourceServlet のリソースを扱っている場合 (@ContextHttpServletRequest をインジェクトしている場合など) には、期待通りに動かない。

なぜなら、(おそらく) デフォルトで選択されるテストコンテナは Servlet をサポートしておらず、Servlet のリソースのインジェクトが行われないからである。

解決策 : Servlet をサポートしているテストコンテナを利用する

テストコンテナの決まり方については、ドキュメントに下記のように書かれている。

A test container is selected based on various inputs. JerseyTest#getTestContainerFactory() is always executed, so if you override it and provide your own version of TestContainerFactory, nothing else will be considered. Setting a system variable TestProperties#CONTAINER_FACTORY has similar effect. This way you may defer the decision on which containers you want to run your tests from the compile time to the test execution time. Default implementation of TestContainerFactory looks for container factories on classpath. If more than one instance is found and there is a Grizzly test container factory among them, it will be used; if not, a warning will be logged and the first found factory will be instantiated.

Chapter 26. Jersey Test Framework

一番簡単な方法は JerseyTest#getTestContainerFactory() をオーバーライドすることだろう。

Servlet をサポートしているテストコンテナもドキュメントに書かれている。

Second factory is GrizzlyWebTestContainerFactory that is Servlet-based and supports Servlet deployment context for tested applications. This factory can be useful when testing more complex Servlet-based application deployments.

Chapter 26. Jersey Test Framework

GrizzlyWebTestContainerFactory を使えばよい。 ちなみに GrizzlyWebTestContainerFactoryDeploymentContext として ServletDeploymentContext を求めるので、その点は注意が必要である。

ということで、下記のようなテストクラスを書けば Servlet のリソースを扱う JAX-RSユニットテストを記述できる。

import org.glassfish.jersey.server.ResourceConfig;
import org.glassfish.jersey.servlet.ServletContainer;
import org.glassfish.jersey.test.JerseyTest;
import org.glassfish.jersey.test.ServletDeploymentContext;
import org.glassfish.jersey.test.grizzly.GrizzlyWebTestContainerFactory;
import org.glassfish.jersey.test.spi.TestContainerException;
import org.glassfish.jersey.test.spi.TestContainerFactory;

public class CookieSessionResponseFilterTest extends JerseyTest {

    private TestContainerFactory testContainerFactory;

    /**
     * テスト用のコンテナを生成するメソッドをオーバーライド。
     *
     * ここで {@link GrizzlyWebTestContainerFactory} を指定することで、サーブレットベースのアプリケーションのテストが可能となる。
     */
    @Override
    protected TestContainerFactory getTestContainerFactory() throws TestContainerException {
        // こういう感じで同じインスタンスを返す必要があるのかはよくわからないが
        // JerseyTest の実装がそういう感じになっているのでそれに合わせている。
        if (testContainerFactory == null) {
            testContainerFactory = new GrizzlyWebTestContainerFactory();
        }
        return testContainerFactory;
    }

    /**
     * テスト用のコンテナにデプロイする内容。
     *
     * {@link GrizzlyWebTestContainerFactory} を使うためには {@link ServletDeploymentContext} を返す必要がある。
     */
    @Override
    protected ServletDeploymentContext configureDeployment() {
        ServletContainer jaxRsServlet = ;
        return ServletDeploymentContext
                // JAX-RS コンポーネントは `ServletContainer` に包んでやる。
                .forServlet(new ServletContainer(configure()))
                // Servlet フィルタの追加も可能。
                .addFilter(TestServletFilter.class, TestServletFilter.class.getSimpleName())
                .build();
    }

    // SimpleResource という JAX-RS リソースをテストしたい場合は、
    // それを ResourceConfig に渡してテスト用の Application を作ればよい。
    // {@link #configureDeployment()} をオーバーライドしたらこのメソッドを
    // オーバーライドしなくても良いはず (configureDeployment 内に書けばよいはず) だが、
    // 一応オーバーライドして {@link #configureDeployment()} から呼ぶようにした。
    @Override
    protected ResourceConfig configure() {
        return new ResourceConfig(SimpleResource.class);
    }

    // テストメソッド 
    @Test
    public void test() {
        final String responseContent = target("simple").request().get(String.class);
        assertEquals("Hello World!", responseContent);
    }
}

自分でテストコンテナのファクトリを書いても良い

上ではもともと Jersey のテストフレームワークに用意されている GrizzlyWebTestContainerFactory を利用したが、独自に TestContainerFactory を実装しても良い。 サーブレットを複数含むテストを書きたい場合などにはそうする必要がありそうである。 (そもそもそういうテストを書く必要がある設計にすべきではないという気もするが。)

JerseyTestでHttpServletRequestを使いたい - Chonaso's Commentary』 が参考になる。 (実際に自分で書いたらわりと手を入れる必要はあったが。)

おわり

まとめると、下記のとおり。

  • Jersey のテストフレームワークが便利。
  • Servlet のリソースも含めてテストしたい場合には GrizzlyWebTestContainerFactory を使用すると良い。

とはいえ、JAX-RSServlet のリソースを扱う必要がある場面は非常に限定的であるはずで、JAX-RSAPI だけで完結できる場面ではそうすべきである。 その方がテストも書きやすいし移植性も高い。 複数の API 仕様の知識 (JAX-RS の知識も Servelt の知識も必要) を求めることもなくなるので、開発者に対しても優しいはずである。

仕事で触っているコードには JAX-RS の中で Servlet のリソースを扱っているものがわりとあるのだが、少しずつ JAX-RSAPI に置き換えていきたい。

*1:これ以外にあるのかどうかは知らない。

Gradle のマルチモジュールプロジェクトで JaCoCo の結果を集計する

Java / Kotlin のコードカバレッジツールとして JaCoCo を使いたい。 Gradle のマルチモジュールプロジェクトでの JaCoCo の導入について記す。

f:id:nobuoka:20180814004742p:plain

(この図は JaCoCo によるコードカバレッジの集計結果の履歴を Codecov で表示した例。)

JaCoCo について

JaCoCo は、JVM 言語のコードカバレッジツールである。 Java Agent によるオンザフライ方式のバイトコード instrumentation によるカバレッジ計測が可能である。

以前、Kotlin のコードカバレッジツールについて書いたので、こちらも参考にどうぞ。

Gradle プロジェクトで JaCoCo を使ったカバレッジ計測を行う

Gradle の JaCoCo プラグインを使うことで、Gradle のプロジェクトで JaCoCo を使ったコードカバレッジ計測を手軽に行うことができる。 ちなみに Gradle 4.9 の段階ではこのプラグインは incubating である。

Junit 5 のテスト実行時にカバレッジを計測する

各モジュールのテスト実行時にコードカバレッジを計測するだけなら非常に簡単で、単に JaCoCo プラグインを適用するだけで良い。

While all tasks of type Test are automatically enhanced to provide coverage information when the java plugin has been applied, any task that implements JavaForkOptions can be enhanced by the JaCoCo plugin. That is, any task that forks Java processes can be used to generate coverage information.

The JaCoCo Plugin - Gradle User Manual

バージョンを表す変数の定義や repositories の定義などは省略しているが、おおよそ以下のようなビルドスクリプトJUnit 5 でのテスト実行時に JaCoCo によるコードカバレッジの計測がなされる。

apply plugin: 'kotlin'
apply plugin: 'jacoco'

test {
    useJUnitPlatform()
}

dependencies {
    implementation "org.jetbrains.kotlin:kotlin-stdlib-jdk8:$kotlin_version"

    testCompileOnly("org.junit.jupiter:junit-jupiter-api:$junit_version")
    testRuntime("org.junit.jupiter:junit-jupiter-engine:$junit_version")
}

デフォルトでは、カバレッジの計測結果は build/jacoco/test.exec というファイルに出力されるようである。

複数モジュールのコードカバレッジの集計

難しいのはここからで、複数モジュールでのコードカバレッジをどう集計するかで私は結構悩んだ。 JaCoCo の結果集計のためのタスクとしては JacocoMerge というのがあるのだが、これをどう定義するのかが難しい。 (どのサブモジュールのカバレッジを集計するのかを明示的に指定するのであればそれほど大変ではないが、自動で全サブモジュールのカバレッジを集計するためのタスク定義をするのが難しい。)

結論としては、ルートプロジェクトに以下のようなタスク定義を行うことで対応した。 (ルートプロジェクトにも jacoco プラグインを適用している。)

task jacocoMerge(type: JacocoMerge) {
    // ルートプロジェクトの評価時にはまだサブプロジェクトは存在しないので、
    // 各プロジェクトの評価完了時に中の処理が走るように。
    gradle.afterProject { p, state ->
        // ルートプロジェクトと `jacoco` プラグインが適用されていないプロジェクトは除く。
        if (p.rootProject != p && p.plugins.hasPlugin('jacoco')) {
            executionData p.tasks.test.jacoco.destinationFile
            dependsOn(p.tasks.test)
        }
    }
}

大雑把に説明すると、jacocoMerge タスクの executionData に各サブモジュールのテスト実行時のカバレッジ計測結果を渡していき、かつ、jacocoMerge タスクの依存に各サブモジュールの test タスクを追加する、ということをしている。

gradle.afterProject を使っている理由や if 文を使っている理由はコメントに書いてあるとおりである。

Gradle のプロジェクトの評価順については下記ページを参照されたい。

集計結果のコードカバレッジのレポーティング

さらにレポーティングのタスクは、ルートプロジェクトに下記のように定義することで行える。 java プラグインが適用されている全サブモジュールのソースファイルをコードカバレッジのレポート対象に含める場合の例である。

task jacocoMergedReport(type: JacocoReport, dependsOn: [tasks.jacocoMerge]) {
    executionData jacocoMerge.destinationFile

    sourceDirectories = files()
    classDirectories = files()
    gradle.afterProject { p, state ->
        if (p.rootProject != p && p.plugins.hasPlugin('java')) {
            sourceDirectories = sourceDirectories + files([p.sourceSets.main.allJava.srcDirs])
            classDirectories = classDirectories + p.sourceSets.main.output
        }
    }

    reports {
        xml.enabled = true
        xml.destination file("${buildDir}/reports/jacoco/report.xml")
        html.destination file("${buildDir}/reports/jacoco/html")
    }
}

本当は JacocoReport#sourceSets を使いたかったが、内部で gradle.afterProject を使われていて期待する挙動にならなかったので諦めた。

ちなみに上の xml.destination の値は Codecov が期待するレポートファイルの位置である。

サンプル

下記プロジェクトで今回書いたコードカバレッジ取得の方法を行っている。

ちなみに CircleCI でのビルド時にコードカバレッジを取得して Codecov で可視化してる。

参考

Java (JVM 言語) におけるコードカバレッジの計測方法

Java と Kotlin で書かれたアプリケーションのコードテストのカバレッジを取りたいなーと思って、コードカバレッジ計測ツールについて調べてみてる。

JVM 言語におけるコードカバレッジ計測の方法

JaCoCo のドキュメントにわかりやすくまとまっている。

Coverage information has to be collected at runtime. For this purpose JaCoCo creates instrumented versions of the original class definitions. The instrumentation process happens on-the-fly during class loading using so called Java agents.

There are several different approaches to collect coverage information. For each approach different implementation techniques are known. The following diagram gives an overview with the techniques used by JaCoCo highlighted:

f:id:nobuoka:20180228230512p:plain

JaCoCo - Implementation Design

カバレッジ情報は実行時に収集されるものなので、情報収集のための仕組みが必要。

大きく分けると Runtime Profiling と Instrumentation の 2 つの仕組みがある。 前者は JVM の仕組み (JVMTI や JVMPI) を使うもの。 後者は実行対象のプログラムの方に収集用の仕組みを搭載する (これを instrumentation というらしい?) もの。

Runtime Profiling

JVM TI は Java Virtual Machine Tool Interface の略。 Java SE 5 で導入された。

JVM TI は JVM 上で動くアプリケーションの状態を検査したり、実行を制御したりするためのプログラミングインターフェイスらしい。

JVMPI は JVM TI よりも古くからある同じようなインターフェイスらしい。 Java SE 5 で (JVM TI ができたことで) 非推奨になり、Java SE 6 で廃止された模様。

これらを使ったコードカバレッジは、アプリケーション側に何も手を入れなくて良いことが利点だと思われる。 が、詳細はわからない。

Instrumentation

上でも説明したように、計測対象のアプリケーションコードに情報収集のための仕組みを搭載する方法が、この Instrumentation である。 Runtime Profiling と異なり、Android アプリの実行環境のような非 JVM 環境でも使用できるという利点がありそう *1

上の図を見るとわかるように、様々な方法がある。

  • ソースコードを変更するもの。
  • バイトコードを変更するもの。
    • オフライン (offline) で変更するもの。 (= JVM に読み込まれる前の状態、例えばクラスファイルそのものを変更する。)
      • Replace と Inject って書かれてるけどそれぞれの意味はわからない。
    • オンザフライ (on-the-fly) で変更するもの。 (= JVM 読み込まれる際などにオンメモリで変更する。)
      • クラスローダで変更する方法と、Java Agent を用いる方法がある。

JaCoCo は、Java Agent を用いてオンザフライでバイトコードを変更する方式である。 *2

Java Agent について

Java Agent については java.lang.instrument パッケージの Javadoc に書かれている。

-javaagent:[=] というコマンドラインオプションで指定して使用できるものである。 次のページも参考になる。

エージェントの背景にある基本概念は、「JVM がクラスをロードする場合、エージェントはそのクラスのバイトコードを修正できる」 という考え方です。

それぞれの特徴

現時点で自分がわかっている範囲で特徴を書いておく。

  • ソースコードを変更する方式は、言語によって使用できるかどうかが変わる。 例えば Java 言語に対応しているツールでも Kotlin には対応していなかったりする。
    • 一方でバイトコードを変更する方式は、JVM 言語であればどれにでも対応できるはず。
  • オフラインで変更する方式は、ビルド時にクラスファイルが書き換えられてしまうので、それをそのまま本番アーティファクトのビルド時に使用できない。 (使用したらダメというわけではないが、パフォーマンスが落ちるなどの問題が起こる。)

様々なコードカバレッジツール

JVM 言語用の様々なコードカバレッジツールについて、Clover のブログで比較紹介してくれている。 (最終更新が 2017 年春なので情報はちょっと古いかもしれない。)

有名どころとしては JaCoCoOpenClover (Atlassian Clover がオープンソース化されたもの)、JCov といったところだと思う。

Instrumentation 方式に着目すると、JaCoCo と JCov はオフラインおよびオンザフライのバイトコード instrumentation に対応しており、Clover はソースファイル instrumentation に対応している。 なので JaCoCo や JCov は (JVM 言語なら何でも対応できるので) Kotlin にも対応するが、Clover は (対応言語に入っていない) Kotlin には対応しない。

Clover と JaCoCo を軽く使ってみたところ、設定の簡単さはどちらも同じ。 出力される HTML を見ると JaCoCo は単純な内容で、Clover の方はプロジェクトリスクの高いものを表示したり、視覚的だったりと、結果表示については高機能さを感じた。

今回は Kotlin でのカバレッジも取りたいので、(対応していない) Clover は選外で、JaCoCo か JCov のどっちかを使うことになりそう。

*1:憶測です

*2:オプションでオフラインでの instrumentation も可能。

Gradle のマルチモジュールプロジェクトで maven-publish プラグインを使う場合の依存関係

Gradle でビルド成果物 (build artifact) を Maven リポジトリに公開するためのプラグインとして、maven-publish プラグインがある。

maven-publish プラグインとマルチプロジェクトの依存関係

簡単な例

Java ライブラリのプロジェクトがあったとして、JAR ファイルを Maven リポジトリに公開するための build.gradle の記述は以下のようになる。

// Java ライブラリのビルド用の設定などは省略

apply plugin: 'maven-publish'

publishing {
    publications {
        mavenJava(MavenPublication) {
            from components.java
        }
    }
}

これで publishToMavenLocal タスクなどが使えるようになるので、例えばローカルホスト上の Maven リポジトリに公開するには ./gradlew publishToMavenLocal コマンドを実行すればよい。

依存関係

上の例では、ソフトウェアコンポーネントとして java コンポーネントを指定している。 このとき、依存関係としては runtime コンフィギュレーションのものが使われる。

Name Provided By Artifacts Dependencies
java The Java Plugin Generated jar file Dependencies from 'runtime' configuration
web The War Plugin Generated war file No dependencies
Maven Publishing (new) - Gradle User Manual

マルチモジュールプロジェクトでの依存関係

例えば :foo プロジェクトと :bar プロジェクトからなるマルチモジュールプロジェクトで、:bar プロジェクトから :foo プロジェクトに依存している場合に、出力される pom.xml に記載される依存関係はどうなるのか?? 具体的には bar/build.gradle に以下のように書かれている状況である。

dependencies {
    compile project(':foo')
}

これはドキュメントには書かれていないが、maven-publish プラグインソースコードを確認したところ、依存先プロジェクトの設定に応じて自動的に依存先ライブラリの指定がなされるようになっていた。

例えば、依存先プロジェクトで maven-publish プラグインが使われていない場合は、プロジェクトのグループやプロジェクト名、バージョンが使われるようである。 依存先プロジェクトで maven-publish プラグインが使われており、特定の条件を満たす publication が存在する場合は、その publication で指定されているグループ・artifactId・バージョンが使われる。

publishing {
    publications {
        maven(MavenPublication) {
            groupId 'org.example'
            artifactId 'foo-sample'
            version '1.1'

            from components.java
        }
    }
}

foo/build.gradle に上のように書かれていたら、./gradlew :bar:publishToMavenLocal タスクで公開される成果物の pom ファイルには以下の内容が含まれることになる。

    <dependency>
      <groupId>org.example</groupId>
      <artifactId>foo-sample</artifactId>
      <version>1.1</version>
      <scope>compile</scope>
    </dependency>

気を付ける必要があること

依存先プロジェクトの中で maven-publish プラグインが使用されて、publication が定義されている必要がある。

下記のように、親プロジェクトで子プロジェクトの publication をまとめて定義することもできるのだが、そうすると依存関係の解決時に 「依存先プロジェクトでは publication がない」 という扱いになってしまって、デフォルト値が使用される。

publishing {
    publications {
        mavenFoo(MavenPublication) {
            groupId 'org.example'
            artifactId 'foo-sample'
            version '1.1'

            from findProject(':foo').components.java
        }

        mavenBar(MavenPublication) {
            groupId 'org.example'
            artifactId 'bar-sample'
            version '1.1'

            from findProject(':bar').components.java
        }
    }
}

私はこれでハマってしまった。 (Exposed の build.gradle を見て、親の build.gradle で子プロジェクトの publication を宣言していたので、それを参考にした、という。) 注意されたし。

Java Persistence API (JPA) の JPQL で集計処理を書く (Spring Data JPA)

Spring Data JPA を使っていて、集計処理をどのように書くのが良いかわからずに調べた記録。 (例は Spring Data JPA 固有の話ではあるが、JPQL の知識は Spring Data JPA 以外での JPA でも使える。)

Spring Data JPA での集計の例

リポジトリにメソッドを定義して @Query アノテーション使うことで、JPQL (Java Persistence query language) によるクエリを記述できる。 これを用いて、例えば FooRepositoryFoo に関する集計処理を記述できる。

    @Query(value = """
        SELECT NEW com.example.AggregationResult(
          FUNCTION('year', foo.date), COUNT(foo)
        )
        FROM Foo foo LEFT JOIN foo.bar bar LEFT JOIN foo.baz baz
        WHERE foo.targetId = ?1
          AND (bar.content IS NOT NULL OR baz.content IS NOT NULL)
        GROUP BY FUNCTION('year', foo.date)
        """)
    fun aggregateCountPerYear(targetId: Long): List<AggregationResult>

上のコードは Kotlin で記述されたメソッド定義の例である。 (FUNCTION('year', foo.date) が 2 箇所にあるのが微妙だし仕様上正しく動くものなのかわからないので何とかしたかったけど、どう書くのがいいかわからなかったのでこの形になっている *1。 誰か詳しい人が居たら教えてください><)

上記の例に含まれる JPQL の知識を下記に述べる。

集計に使える JPQL の知識

参照した JPA 仕様

学び

SELECT 句内のコンストラクタ式 (JPA 2.2 仕様の 4.8.2 節)

JPQL の SELECT 句の項目として Java クラスのコンストラクタを記述できる。 集計結果をオブジェクトで返したいときに便利。 ちなみに対象のクラス名は完全修飾名で指定する必要がある。

データベース関数の実行 (JPA 2.2 仕様の 4.6.17.3 節)

データベースの関数を FUNCTION(function_name, arg1, arg2, ...) の形で記述できる。 JPQL で定義されていない集計関数を用いたい場合や、ユーザー定義の関数を利用したい場合などに便利。

LEFT JOIN (JPA 2.2 仕様の 4.4.5.2 節)

LEFT JOINLEFT OUTER JOIN はシノニムである。 JPA においては、エンティティ定義でエンティティ間の関連を定義して、JPQL では 単純に下記のようにプロパティ名の記述だけで JOIN を記述できる。

        FROM Foo foo JOIN foo.bar bar

ただし、上記のコードでは foo.barnull となるような Foo は処理対象から外れてしまう。 foo.barnull でも処理対象とするために LEFT JOIN を使用する必要がある。 普通に SQL を書く場合には LEFT JOIN を使うのは自然だと思うが、JPQL だと JOIN の条件を書かなかったり、Foo のエンティティを普通に引っ張ってくるときは barnull でも取得できたりするので、LEFT JOIN が必要なことをうっかり忘れがちになりがちな気がする。 注意が必要。

GROUP BY (JPA 2.2 仕様の 4.7 節)

SQL と同様 GROUP BYHAVING を使用できる。 SELECT 句では集約関数を使用できる。 (上の例では COUNT 関数。)

参考

*1:テストは書いてあるのでまあ大丈夫かなという……。